よく、現場を経験しないで管理職になった人に対して、
「あの人は現場のことが分かっていない」「現場感覚が分からない」
と言うことがあります。
僕は幸いにして、特養の生活相談員になる前は
1年間だけとはいえ、介護職員だったので、
あまり「分かっていない」と言われることはなかったように思います。
(なった後も、欠員補充のために随分現場で仕事をしていたからかもしれません)
では、具体的には、どんなことを現場感覚と言うのだろう、と、
僕は色々と考えてきました。
それをハッキリさせないと、言われ続ける方もたまったものじゃないよな、
と思うので、具体的なところで書いてみます。
往々にして現場感覚とは、現場の大変さの象徴でもあり、
現場以外の人に、「この大変さが分かってたまるか!」とでも言うような、
少々自暴自棄な意味も込められているように感じています。
主に特養での体験の中で、具体的な例を挙げるなら・・・
◎
【夕食後、就寝前のトイレ介助】
職員がぐっと減る時間帯。
僕はトイレの前で利用者さんを待ち受けて、
ひたすらに一人で介助できる方をトイレに誘導していました。
皆さん、トイレに行きたかったり、
また、疲れてくる時間なので、少しでも早く部屋へ連れていって横にしてもらいたい、
という状況です。
訴えの嵐と迫り来る時間の前で
利用者さんの気持ちなど考える余裕もだんだんなくなっていき、
ただ、叫び声ともつかぬ大声と、汗にまみれながら、
いっそ心などなくしてしまった方がラクなのか、と思いながら、
どんどん機械的になっていく自分を見てしまう・・・
そんな自己嫌悪と誰かのせいにしたくなる気分の二律背反。
◎
【夜間のオムツ交換】
朝の3時半から50人のオムツ交換&トイレ誘導を、
2人の夜勤で行う状況。
また今日に限って便失禁の方が多く、
全更衣、シーツ交換まで行う方が8人くらい。
利用者さんも寝ているところを起こされて不快なので、
ぶすっとされている方や、怒り出す方も。
「ごめんなさいね。すぐ終わりますからね」と言いながらも、
時計に目をやるともう5時半。
最期の方を終えて、洗濯室で後始末をしてから寮母室へ戻った時には、
すでに5時55分。
6時からは起床介助に入るので、足腰を休める間もなく、
お茶と持ってきていたパンを一気にほお張って、
汗まみれのまま爽やかな朝のために動き出す時の
二度と経験したくないような疲労感・・・。
◎
【機械浴の方の入浴介助】
年々、特養では重度化が進み、
機械浴利用の方が増え続けました。
入浴介助の着脱担当となると、2時から5時までは、
延々利用者さんに服を脱いでもらって、抱えてチェアへ移乗。
その間に、前に入っていた方が出てくるので、身体を拭いて、
抱えて車椅子へ移乗、という介助内容。
それを3時間ぶっ通しなので、さすがに腰がやられます。
夏の暑い時期などは、もう汗も出ない、というほどに。
お一人お一人に丁寧に親切に介助を行うものの、
最後の方となってくると、いけないとは思いつつも、あと何人?という感じに。
それで終わった〜と思っていたら、実はもう一人いたりすると、
みんなで大きく肩を落とす・・・なんてことも。
また、いかに早く終えるかがやりがいになってしまったりして、
4時半とかに終わると素晴らしい、という雰囲気も生まれてしまう。
◎
と、日頃ほとんど書いてこなかった、
ちょっとブラックな面ではありますが、
特養などの施設経験者なら分かって頂けるのかな、と思います。
介護が重労働だな、と思うときはこんなときで、
肉体の疲労が精神をむしばんでいく時はさらに苦しいな、と思います。
いい介護をしよう!と真面目に頑張るほど苦しくなる時もあるように思います。
その苦しみを「現場感覚」と言ったりしますが、
それにも勝るとも劣らない「楽しみ」もまた「現場感覚」だったりする、
ということは、忘れずにいたいものです。
また、生活相談員の仕事をしてみて思うことは、
相談員には相談員の「現場」がある。
事務員には事務員の「現場」、
施設長には施設長の「現場」がある、ということなんですね。
なので、介護職だけが「現場」というのは、あまり適切ではないなあ、
なんて思ったりします。
あえて言うのなら「介護現場」だな、と、思っています。
みんなそれぞれの現場で頑張っているはずなので・・・、
共通理解を持って、同じ目的に向かって歩めるといいなあ、と
少々きれいごとですが思ってしまいます。
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